私の会社「いつ売れば良い?」

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「いつ会社を売るべきか」

第三者への事業承継を検討された方であれば、必ず1度はお考えになる非常に大事なテーマであると思います。

ご自身の会社の成長・発展・存続を考えていく中で、どのタイミングで承継を行うことがベストであるのか、相手選びと同じくらい非常に難しい問題です。

これまでの経験則の中では、「早く売るのがベター」です。

買い手側ではM&Aは鮮度が命と言われることもあります。

本稿では、なぜ早期の売却がベターなのか、売却後に会社にどのような関りをもつことができるのかをご紹介しながら、オーナー様のご不安にお答えしていきます。

 

①売却価格に与える影響

M&Aを行う際の株式譲渡価額の算出方法は複数ありますが、一般的には、

1.時価純資産方式

2.類似業種批准方式(類似上場会社比較方)

3.DCF方式

*定量的な算定式をご紹介しております。この算定式の値だけではなく、定性的な評価、売り手側の希望などを加味して、最終的には、買い手候補との相対交渉で譲渡条件は決定いたします。

 

上記3点のいずれか、もしくは併用を行って計算を行うことがほとんどです。

それぞれ異なる計算方法にて株式価値を計算していきますが、大まかにみれば株価を高めていくためには損益計算書上の利益を潤沢に創出し、貸借対照表上の純資産を着実に積み上げていくことが重要で、評価としての価値向上につながっていきます。

そう考えた場合、事業承継を行うのに最適なタイミングは過去最高益を上げたタイミングとなるでしょう。

しかし、過去の最高益という数字は、創業からの損益計算書を並べて比較し、結果として最高益のタイミングがわかるだけのものであって、将来の収益予測とは異なるものです。

言い換えれば、売却を検討しているタイミングから時期がずれることによって、将来の決算状況が悪化する可能性もあります。

既述の算出方法の3でご紹介したDCF方式に「現在価値と将来価値」という概念があることをご存知でしょうか。

現在価値と将来価値とは、例えば今この瞬間に手に入る100万円と、5年後に100万円を受け取ることができる権利に対して、時間価値を反映させて試算を行う考え方です。

この考え方に基づくと、同じ100万円という価値であっても、受け取る時期が将来に延びれば延びるほど、何か不足の事態が起きて100万円を受け取れなくなる事象が起きる可能性があること、100万円を元手に他の案件に投資を行う機会を失うことなどをリスクとして考慮し、今手に入る100万円の価値を将来の100万円より高く見なすことになります。

事業承継は実施の意思を決めてから候補会社の選定、譲渡スキームの検討、希望価額の算出、譲渡候補との交渉、デューデリジェンス対応、最終契約の交渉など、非常に長いプロセスを経ることとなります。

既に確実に計上されている利益をベースとして譲渡意思は早期に決定し、具体的な準備を進めていくことが、M&A成功のポイントであると言えます。

 

②意思決定後、売却後の関わり

譲渡の意思を固めた後にも、M&Aは早くて半年~1年程度、時間を要する案件では数年間かけてクロージング(譲渡完了)にたどり着く場合もあります。

事業承継型の案件では、譲渡が完了するまでに間に、オーナー様の体調が突然悪化されて経営への関与が難しくなるケースや、主要顧客の契約打ち切りによって収益が急激に悪化するケースなども散見されます。

意思決定後も、クロージングに向けて迅速にM&Aに向けた準備を進めていくことが肝要です。

また、株式を売却した後には、これまで営業・法務・総務・財務・税務等、経営も事業も全て一人で背負っていた重圧から解放され、顧問職や会長職として自社の成長に貢献していくことも可能です。

株式の大部分を保有されているオーナー社長の場合、会社の意思決定に対しては株主・代表取締役として、経営と事業の両面を一人で取り仕切っているケースがほとんどですが、 M&A後の会社との関わり方を考えていく際には、大きく分けて、

1.株式の全てを譲渡し、代表取締役(取締役を含む)からも退任を行い、顧問・相談役として引継業務や経営助言等に注力をする

2.株式の全てを譲渡し、取締役顧問・会長として引継業務や経営助言等に注力をする

3.株式の一部を譲渡し、代表取締役(取締役を含む)からは退任を行い、株主として意思決定のみに関与する

上記の3種類の関わり方があります。

形式的な話ではありますが、株主は株主総会等の決議機関において持ち分比率に応じた議決権を行使することになるため、関わる意思決定の対象は株主総会の決議事項として上程される内容が中心です。

株主総会決議事項の代表的な例として、役員の選解任、計算書類の承認、剰余金の処分・配当、譲渡制限株式の買取、株式の併合、定款の変更、事業譲渡の承認、解散等があり、会社の経営上の意思決定に関わる内容がほとんどです。

取締役は取締役会や事業運営の重要な局面において、議決権や役職に応じた職務権限を行使することになるため、関わる意思決定の対象は取締役会の決議事項として上程される内容や、事業運営における重要事項が中心です。

取締役会決議事項の代表的な例では、重要な財産の処分及び譲り受け、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任及び解任、支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止等があり、事業運営に関わる内容が多くを占めます。

このように、M&Aにより株式を譲渡した後にも、会社に何らかの形で貢献を果たすことが可能です。

好機を逃さない迅速な売却を実現し、その後、経営に関与する方法も1つの選択肢としてお考えになられてはいかがでしょうか。

 

なお、譲渡のタイミングに関して、最も避けなければならないタイミングは、“遅すぎる”ということです。

例えば、業績不振になってから、とか、体調が悪化してから、M&Aでの売却に着手することです。都合が悪くなればなるほど、条件は必ず悪化します。

これも非常に重要なポイントですので、是非、頭の片隅に置いていただければ幸いです。